給与所得控除は多過ぎる?!
所得とは収入から必要経費を引いたものです。(収入-必要経費=所得)
自営業者の事業所得で考えると収入は売上等のことで必要経費は売上等を得るために要した費用(仕入、販売管理費等)です。
サラリーマンの給与所得で考えると収入は給与や賞与等の合計額です。では、サラリーマンの必要経費はというと給与所得控除です。この給与所得控除は実際に負担した金額ではなく所得税法で収入金額に応じて決められています。例えば年収500万円の場合、給与所得控除額は154万円です。(平成30年4月1日現在の法令等による。)
給与所得控除は2つの性格を有していると言われています。それは「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整」です。前者はサラリーマンが給与を得るために個人的に払っている必要経費を集計する作業等の負担を考慮して概算的に控除するものです。後者は給与所得が勤労性所得であり他の資産性所得に比して担税力が弱いことに対する配慮です。
上記の年収500万円のケースからも給与所得控除額はマクロ的に見ると給与収入の約30%ですが、サラリーマンは実際そんなに必要経費を負担しているでしょうか。交通費や備品の購入費は会社が負担しているところが多いと思います。そのようなことからも現行の給与所得控除額は著しく過大であると言われています。
事業所得も勤労性所得として給与所得と同質のものと考えられます。近年、働き方が多様化したことにより増加したフリーランスや請負契約等による労務提供については事業所得として課税されているため給与所得控除の適用はありません。このため、労務提供の内容がほぼ同様とした場合、自営業者とサラリーマンでは課税上大きな差異が生じ課税の公平が阻害されていると考えられます。
働き方改革では「同一労働・同一賃金」等のほかに「副業や兼業」を起業の手段として推奨しています。このような働き方の多様化を踏まえ、平成30年税制改正大綱では平成32年分から給与所得控除額を一律10万円引下げ上限額を年収850万円超で195万円と縮小し、自営業者とサラリーマンの両者に適用される基礎控除額を一律10万円引き上げるとしています。